糖尿病と歯周病

糖尿病と歯周病

歯周病と糖尿病の密接な関係

歯周病と糖尿病、見たところ一方は『口の病気』、もう一方は『体の病気』と双方に何ら関係性がないように思われます。しかし近年、この2つの病気は、互いの病気の発症や病状の悪化に深く関わっていることが明らかになってきました。

では、歯周病と糖尿病は具体的にどのような深い関係があるのか?についてお話ししていきましょう。

 

糖尿病と歯周病はどのように関わっているのか?

これまでの様々な研究や調査によって、糖尿病と歯周病には、次のような関連があることがわかっています。

 

➀糖尿病の人はそうでない人よりも、歯周病になるリスクが高い

糖尿病の人は1型・2型に関わらず、糖尿病でない人よりも歯周病罹患率が高くなります。特に2型糖尿病の人の場合、歯周病の発症率が通常の2.6倍も高いという調査結果が報告されています。

②糖尿病の人は、歯周病が重症化しやすい

糖尿病で血糖コントロールが不良な方の場合、通常よりも歯周病の進行スピードが速くなります。また、糖尿病の人はそうでない人よりも、歯周病が重症化する割合が高くなっています。

➂歯周病を放置すると、糖尿病になりやすい

歯周病を放置して重症化した人では、そうでない人よりも新たに2型糖尿病に発症する割合が高くなります。また、糖尿病までには至らないまでも、血糖値の上昇がみられる“糖尿病予備軍”の割合も多くなっています。

➃歯周病が重症化すると、糖尿病が悪化しやすい

歯周病が進行すると、血糖のコントロールがうまくおこなえなくなり、糖尿病の悪化につながることがわかっています。

 

糖尿病が歯周病に与える影響

糖尿病とは

”糖尿病“という病気から真っ先に連想されるものと言えば『血糖値』です。定期的に健康診断を受けている方であれば、検査結果の中の『血糖値』という項目を見かけたことがあると思います。この『血糖値』は血液内におけるブドウ糖の濃度をあらわしています。

私たちの体は、ブドウ糖から体内でエネルギーをつくりながら生命活動を維持しています。そのブドウ糖を血液中から体内に取り込む際に重要な働きを担っているのが、すい臓から分泌される『インスリン』というホルモンです。

この、インスリンが分泌されない、もしくは、インスリンの働きが悪くなると、体内へのブドウ糖の取り込みがうまくおこなえず、血液中のブドウ糖濃度が上昇してしまいます。このような状況を一般的に「血糖値が高い」といい、血糖値が高い状態が長く続くと糖尿病の発症が疑われるようになります。

糖尿病では、血糖値の上昇そのものよりも、それによって起こる体の変化の方が極めて重大です、高血糖の状態は血管への負担が非常に大きく、そのダメージがやがて血管をボロボロにしていきます。これにより、体の様々な場所に障害が起こる“糖尿合併症”を発症していきます。

 

歯周病は糖尿病の“第6番目の合併症”

高血糖による血管へのダメージは、体の各所で様々な合併症を引き起こします。このうち『糖尿病腎症』『糖尿病網膜症』『糖尿病神経障害』は糖尿病の3大合併症として広く知られています。そして、この3大合併症に続き、第6番目に名を連ねているのが『歯周病』なのです。

糖尿病による血管障害は、免疫力の低下やコラーゲン代謝異常、組織における修復能力の低下などを引き起こします。細菌の感染が原因で起こる歯周病にとって、体の免疫力の衰えはそのまま発症リスクの上昇につながってしまいます。さらに、歯ぐきや骨の修復能力が低下してしまうと、歯周病による組織の破壊を抑えることもできなくなります。以上のようなことが、糖尿病による歯周病の発症率の増加や症状の悪化を招く原因になっているのです。

 

歯周病が糖尿病に与える影響

歯周病とは

歯の周囲を取り囲む歯ぐき・セメント質・歯根膜・歯槽骨の4つの組織は『歯周組織』と呼ばれ、歯を支える重要な役割を担っています。歯周病は、これら歯周組織が歯周病菌の感染によって破壊される病気で、むし歯とならぶ“歯科の二大疾患”として知られています。

歯周病は、成人の8割がなる病気といわれ、特に50代以降になると歯を失う原因の半数以上を占めるようになります。

 

なぜ歯周病が糖尿病の悪化につながるのか?

「糖尿病が歯周病の進行や病状の悪化の原因になる」という点については、以前より医療従事者の中で広く知られていました。しかし、様々な研究や調査が進む中で実は歯周病も糖尿病の進行や悪化の原因になることが徐々に明らかになってきたのです。そのメカニズムについては次のように考えられています。

人間の体内に細菌が侵入すると、体の中ではその細菌に対抗するための様々な物質がつくられます。その中の1つである『サイトカイン』という物質は、細菌の感染や炎症に働きかける重要なタンパク質です。

お口の中に感染した歯周病菌が、歯ぐきの血管を通じて体内へ侵入すると、体の中で『TNF-α』というサイトカインが分泌されます。実は、このTNF-αがインスリンの働きを弱めてしまうことが、近年の研究によって明らかになっています。

先にもお話したように、インスリンには血液内のブドウ糖を体内に取り込むのをうながして、血糖濃度を一定に保つ働きがあります。つまり、歯周病菌の感染によってTNF-αの産出が増えると、インスリンがうまく働かなくなって血糖値の上昇を引き起こすというわけです。

実際にこれまで国内外の研究においても、「糖尿病の患者さんに歯周病治療をおこなった結果、血糖値が改善された」と数多く報告されています。

 

将来の健康維持には歯周病予防が大事

歯周病は、糖尿病のみならず体の様々な疾患に影響を及ぼすことがわかってきています。

例えば、血管の壁が厚くなり、血液の流れを遮断してしまう動脈硬化。この動脈硬化の病巣をよく調べてみると、数種類の歯周病菌が検出されたという報告があります。動脈硬化は、後に心筋梗塞や脳梗塞を招く重大な疾患であることから、歯周病がこれらの病気の引き金となる可能性が指摘されています。

 

最後に・・・

歯周病を予防することは、もはやお口の健康維持のみならず、全身の健康維持においても重要であることがわかって頂けたでしょうか。あなたの健康のために、予防歯科による定期的な歯ぐきチェックやクリーニングをはじめていきましょう。

 

 

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