むし歯が自然に治る?『再石灰化』の不思議

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むし歯を削らずに治療できるとしたら、こんなに嬉しいことはありませんよね。これは夢のような話に思えるかもしれませんが、実はあなたのお口には「再石灰化」という、むし歯になりかけた歯を修復する自然の力が備わっています。

今回は、この「再石灰化」の仕組みと、効果的なむし歯予防の方法について詳しくお伝えしたいと思います。

歯の表面で起きている「脱灰」と「再石灰化」のプロセス

むし歯は、お口の中に存在するミュータンス菌やラクトバチラス菌などのむし歯の原因菌が酸を作り出し、その酸が歯の表面を溶かすことで発生する病気です。これらの細菌は食べ物に含まれる糖分をエネルギー源として酸を生成します。歯のエナメル質はリンやカルシウムといったミネラルから成り、酸に弱い性質を持っています。そのため、酸にさらされることでエナメル質が溶け始める状態を「脱灰(だっかい)」と呼びます。

一方で、唾液には酸を中和し、さらに唾液中のリンやカルシウムを使ってエナメル質を修復する働きがあります。この修復作用を「再石灰化(さいせっかいか)」と呼び、常に「脱灰」と「再石灰化」が繰り返されながら、歯の健康が維持されています。

むし歯の発生は「脱灰」と「再石灰化」のバランスが崩れることによって起こる

「脱灰」と「再石灰化」は常にバランスを保ちながら歯の健康を維持しています。しかし、何らかの理由で「脱灰」が優勢になると、エナメル質が溶ける速度が急激に増し、むし歯が進行します。むし歯が発生するのは、この「脱灰」と「再石灰化」のバランスが崩れ、「脱灰」のほうが強く作用した結果です。

「脱灰」が優位に立つ原因としては、例えば、歯磨きが十分でなく、歯の表面にプラーク(細菌の塊)が多く残っている場合や、唾液の分泌量が少なかったり、唾液自体の質に問題がある場合などが挙げられます。

初期のむし歯(CO)は「再石灰化」で治る可能性がある

学校や職場の歯科検診で「C1」や「C2」という用語を聞いたことがあるでしょう。これらはむし歯の進行度を示すもので、「C1」はエナメル質まで、「C2」は象牙質までむし歯が進んでいることを意味します。「C1」以上になると、通常、その部分を削って埋める治療が必要です。

しかし、むし歯の進行には「C1」になる前の「CO(シーオー)」と呼ばれる初期段階があります。この「CO」はエナメル質の表面がわずかに溶けている状態を指し、症状はほとんど目立たないものの、歯の色が白っぽく見えることがあります。この段階でむし歯が見つかれば、「再石灰化」により元の状態に戻すことが可能です。つまり、むし歯がごく初期の段階であれば、削らずに自然治癒力で治療することができるのです。

むし歯予防のために「再石灰化」を促進する方法

むし歯を予防するためには、「脱灰」が優位にならないようにし、「再石灰化」がしっかりと働くようにすることが重要です。以下に、そのための具体的な方法をいくつか紹介します。

  1. プラークコントロールを徹底する
    プラークはむし歯の原因菌の住処となる細菌の集まりです。歯の表面に長く残ると、むし歯菌が酸を作り、「脱灰」が進みます。そのため、歯磨きやフロスを使ってプラークをしっかり除去することが大切です。また、歯科医院で定期的にプロによるクリーニングを受けることで、歯磨きでは落としきれないプラークも除去することができます。
  2. 唾液の分泌を促す
    唾液は「再石灰化」に必要不可欠な要素であり、酸を中和する働きも持っています。ガムを噛んだり、水分補給を心がけたりすることで唾液の分泌を促進し、むし歯予防につなげましょう。
  3. フッ素の活用
    フッ素は「再石灰化」を促進し、歯の表面に硬い層を形成することで、酸に対する抵抗力を高めます。フッ素入りの歯磨き粉を使用したり、歯科医院でフッ素塗布を受けることが推奨されます。
  4. 「ダラダラ食べ」や「ダラダラ飲み」を避ける
    食事や飲み物の摂取が続くと、口の中が酸性の状態が続き、「脱灰」が進みやすくなります。食事と食事の間には十分な間隔を空け、間食の回数を減らすことで、唾液が歯を修復する時間を確保しましょう。

これらの方法を実践することで、「再石灰化」を効果的に促進し、むし歯を予防することが可能です。ぜひ、日常生活に取り入れてみてください。

著者 歯科医師 理事長 菅良宜

医療法人凌和会 すが歯科・矯正歯科 門真守口院 大人こどもクリニック

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